ありふれた発がん物質→アクリルアミド

■発がん物質「アクリルアミド」の健康への影響評価がまとまる
2002年、スウェーデン国立食品局(NFA)の研究報告によって、ごく一般的な食品や家庭料理も含まれている「アクリルアミド」という成分に発がん性があることが指摘されました

その報告では、高温で調理された炭水化物を多く含む食品に高濃度で検出されたとしており、特にフライドポテトやポテトチップスなどの検出率が高く、食品業界に大きな波紋を投げかけるものとなりました

これにより世界中でアクリルアミドに対する関心が高まり、日本でも2011年に食品安全委員会おいて、「加熱時に生じるアクリルアミド」についての健康影響評価を行うことが発表され、2016年2月に食品安全委員会ワーキンググループにおいて健康への影響評価(案)が取りまとめられています

その評価によると、世界から敵視されたフライドポテトやポテトチップスは、実は日本人の場合は推定摂取量が意外に少ないのではないかとみられています

■高温調理された野菜からの摂取が56%
食品安全委員会では、日本人のアクリルアミド摂取による影響を見るため、平均的な摂取量を調べました。

食品中のアクリルアミド濃度と食品摂取量、摂取頻度などから、推定平均摂取量を算出。その結果、日本人の平均摂取量は、0.240μg/kg体重/日となりました

食品中に含まれている割合は、次の通りです。

高温調理した野菜……56%
(炒めたもやし、炒めた玉ねぎ、炒めた蓮こん、炒めたキャベツ、フライドポテトなど)

・飲料……17%
(コーヒー、緑茶、ウーロン茶、麦茶等)

・菓子類・糖類……16%
(ポテトスナック、小麦系菓子類、米菓類等)

・穀類……5%
(パン類等)

・その他……6%
(ルウ等)

意外なことに、ポテトチップスなどのスナック菓子類などよりも、炒めた野菜や、カレー用にじっくり炒めた玉ねぎなど高温調理した野菜からの方が断然に摂取量が多かったのです

ポテトチップスやフライドポテトだけを避けていても、実は大して減らすことにはなっていなかった。あるいは野菜は健康に良いと思って(もちろん有効な栄養成分を含んでいますが)、積極的に食べている人でも、調理によってはアクリルアミドを多く摂取していたかもしれないということです

また食事以外でも、飲料水(浄水で最大0.013μg/日)、喫煙は食事よりも影響が大きいとする報告もあります。また確定されたわけではありませんが、喫煙されていない方の受動喫煙にも配慮が必要です

日本人の総合的なアクリルアミド摂取量は、海外と比較して同程度、または低い数値でした。こうした結果から、食品安全委員会の評価としては、次のように判断されました。

「非発がん影響(神経や免疫に対する影響等)」については「極めてリスクは低い」。「発がん影響」については、動物実験とヒト対象の摂取量とがんとの関連性の研究から、「ヒトにおける健康影響は明確ではないが、公衆衛生上の観点から懸念がないとは言えない」』

私たちが普段から接している食品に広く含まれていますし、栄養のバランスを図る食べ方をする上でも、ゼロにすることは難しく、できるだけ「減らすように努力することが望ましい」としています

■アクリルアミドが生成される原因は?
そもそもアクリルアミドは食品中のアスパラギンと果糖・ブドウ糖などの還元糖が、「揚げる」「焼く」「炙る」等の120度以上の加熱調理をすることによって、食材に含まれる水分が減ることで生成されます

毒キノコや河豚毒のようになにか特定の食品ではなく、炭水化物を含むポテトフライやポテトチップスなどのスナック菓子、クッキー、トースト、シチュー、焼肉などの様々な加熱調理をする一般の料理に含まれていますから、ショッキングなお話です

アクリルアミドは動物実験から「遺伝毒性のある発がん物質」と判断されていて、この「遺伝毒性」とは遺伝子(DNA)を傷つけて、細胞をがん化させる性質があるとされています。ただし「遺伝」とは言っても、必ずしも「子や孫などに遺伝するものではない」とされています。

アクリルアミドを食事から摂取することとがんとの関連調査が行われていますが、一貫した傾向は見られていません。がんには喫煙や飲酒など、その他の要因も関係しているためです。

■市販食品も企業努力で低減
アクリルアミドが話題になって以来、日本の食品事業者も低減するための対策に取り組んできました。

農林水産省の調査では、ポテト製品のアクリルアミド濃度を平成18、19年度と25年度で比較したところアクリルアミドの濃度の平均値は、25年度では4割以上減っていました

■家庭でできる調理のコツは和食?
では私たちは、家庭でどのようなことに気をつければよいのでしょうか。

食品安全委員会では、次のように提言されています。

食材を揚げ物や炒め物など、高温で長時間の調理は控える(焦がさないように、食材をよくかき混ぜる)
・野菜類、芋類は、切った後、加熱前に水でさらしたり、下ゆでする
・じゃがいもは冷蔵庫にいれて貯蔵しない(冷蔵すると還元糖が増えるため)

不思議なことに、「蒸す」「煮る」「茹でる」などの水を利用した調理ではアクリルアミドはほとんど含まれていませんでした

こういうことから考えると、和食は、主食のごはんやめん類は炭水化物ですが、「炊く」「煮る」「茹でる」という調理が多いので、アクリルアミドについてはリスクの低い調理法といえるでしょう

■極端な情報に振り回されないように
こういう話題が出ると、極端に怖がる人や、また不安を煽る人もいます。アクリルアミドが含まれる食品を一度摂取したから、すぐにガンになる、というお話でありません

特に野菜や果物、海藻類、豆類、キノコ類などには、ビタミンやミネラル、ポリフェノールなどの健康に役立つ栄養成分も含まれています。不足しがちな人は、意識して食べるようにすることは健康を維持・増進するためにも必要なことでもあります

アクリルアミドに限りませんが、古くから伝わる食養生で「五味五色五法」というように、様々な食材を様々な味付けや調理法で食すということが、バランスの良い食事になるということは理にかなっていると思います

日常的に炒め物や焼き物ばかりが食卓に並んでいる人は、炒め物の代わりにお浸しを置き換えるなど、ちょっと意識してみれば摂取量を減らすことにつながります

また食事以外にも、喫煙などの生活習慣など、がんになるリスクが高い条件もあるのですから、幅広い食品から栄養のバランス良く食べ、また日頃の生活習慣も整えておくことが何より大切なことと言えるでしょう

<参考>
・加熱時におけるアクリルアミドワーキンググループにおける審議結果について(食品安全委員会)
・食品中のアクリルアミドの低減対策について(農林水産省)

文・南 恵子(All About 食と健康)

All About2016.04.04

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