「脳疲労」早く気づいて→判断力低下

福岡県大牟田市の「不知火(しらぬい)病院」院長で精神科医の徳永雄一郎さん(67)が「『脳疲労』社会-ストレスケア病棟からみえる現代日本」(講談社現代新書)を出版した。IT化による仕事の形態の変化や、スマートフォン(スマホ)の普及などで、現代人は脳が疲れやすくなっていると指摘国の調べでは国内に100万人以上の患者がいるとされるうつ病の発症も、「脳疲労」の状態を自分や家族が早めに気づくことで防げると語る

【図はこちら】体調の変化に気づくためのポイント

徳永さんによると、脳疲労とは「脳の働きの一つである集中力や判断力が低下し、通常の就労や生活に支障を来す状態」。人間は本来、視覚、聴覚、嗅覚など五感を使って情報を得たり、コミュニケーションを取ったりしてきたが、現代人は「目と手(または指)」ばかり使い、その結果、五感と認知の異常が起き、脳の副腎皮質刺激ホルモンが過剰に分泌し、うつ病の発症につながると指摘する

職場では、パソコンでの作業のように体を動かさず脳を使う業務が増え、疲労の部位が「肉体」から「脳」へと大きく変化した。職場以外でも「パソコンやスマホを手放せない状態が続き、脳が疲れやすい生活が日常化していることも脳疲労の原因」とみる。インターネットの普及により、業務を速く処理できるようになった半面、「即答を求める社会」になっていることも脳疲労を引き起こすストレスの一因として挙げる

大手企業の産業医を20年以上務めており、職場環境と社員の変化も痛感している。「業績の悪化や人員削減に伴う長時間労働。それに加え、少子化できょうだいげんかの経験が少なく、小さいころから叱られた経験も乏しく、真のコミュニケーションを取ることなく成長した“打たれ弱い”人々が増えているのではないか」と感じている

「脳疲労」を放置するとどんな症状が現れるのか。

 脳の機能が著しく低下し、肩凝りや頭痛がひどくなるだけでなく、胃痛、下痢、動悸(どうき)など複数の自律神経失調症状が現れる。徳永さんはこれを「脳不調」と呼ぶ。うつ病という診断がつく前の「前うつ状態」という。脳不調は運動などの気分転換が逆に症状を悪化させることもあるので、「休養」と「専門科受診」が必要になる。本には、「脳疲労」の段階で自分自身や家族が変化に気づくためのチェックポイントも掲載した=図(抜粋)。

脳疲労を防ぐには「仕事にかけるエネルギーは7割程度にとどめ、残りの3割は趣味や家族のために使ってほしい」と徳永さんは提案する

進学や就職などで、生活環境が大きく変化する時季。徳永さんは、特に新入社員に向けて「力まず、半年から1年ぐらいかけてゆっくりと環境に慣れるくらいの心構えを」とアドバイスする。上司に対しては「自分が新人だったときと今の若者とは違うということを念頭に置き、コミュニケーションを取りながらじっくりと育ててほしい」と話す。

西日本新聞2016.04.14

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