「楽なブラジャー」売上げ3倍

ブラジャーに新風が吹いているこれまでのブラジャーは金属のワイヤを使って胸の形を補整するのが主流だったが、きれいに見せることだけでなく楽な着心地を求める女性が増え、ノンワイヤのブラジャーが売れているその背景には、下着業界の技術力の進化と、震災や不況の影響による生活の変化があった。【中嶋真希】

【写真】種類も豊富 楽ちんブラジャー

◇知る人ぞ知る商品だった

各メーカーの下着が並ぶ新宿高島屋(東京都新宿区)の売り場「ランジェリーサロン」。レースや刺しゅうが施されたブラジャーが並ぶ中、店頭の目立つ場所にブラジャー「スロギー ZERO FEEL(ゼロ・フィール)」が並んでいた伸縮性のある素材を使い、生地と一緒に伸びる特殊なのりを使った縫い目のないブラで、体を締め付けない。レースなどの装飾もなく、シンプルだ

ゼロ・フィールは下着メーカーのトリンプ(東京都中央区)が2013年3月から販売しているシリーズだ。だが当時は量産できなかったため、取扱店舗も少なく、「知る人ぞ知る」商品だったという。15年8月にカラー、サイズを拡充し、取扱店舗も増えたことをきっかけに前年比の3倍を売り上げ、累計110万枚を売るヒット商品になったブラジャーをつけ始める小中学生にも需要があり、今年2月にはSサイズも登場した

◇「動きやすい」と介護職も求める

これまでノンワイヤのブラジャーは年代の高い方の利用が多く、かわいいデザインもなかった」と同店の販売員、瀬沼繭美さんは話す。ピンクやグリーンなど豊富な色が若い女性から支持されていることに加え、「介護職の方から、動きやすいブラが欲しいと問い合わせを受けたこともあった」という「スーツを着る時にはワイヤ入りのブラを、体を使う仕事や長時間の着用にはノンワイヤをすすめている」という

トリンプはほかにも15年3月から新素材のワイヤを使った「ワンダーメイク」を販売しているプラスチック素材でできたメッシュシート状のワイヤを使っているため、胸にくいこまないのが特徴だゼロ・フィールは胸の形をきれいに見せる補整力が弱いため、自宅や旅行時を想定しているが、ワンダーメイクは職場にも着用して行ける。1年間で約27万枚を売り上げた

楽なブラジャーへの需要は高く他社からも続々発売されているワコールではゼロ・フリーのように縫い目のない「ルンルントップ」を発売し、ピーチジョンは「働く女性の味方」をキーワードに「ワークブラ」を販売している

◇女性の要望に技術が追いついた

「しめつける」といった不満は以前からあったのに、今ノンワイヤが人気になのはなぜなのか。スロギーの開発を担当したトリンプの河野智美さんは「楽なブラジャーが欲しいという要望に、技術が追いついてきた」と話すこれまでブラジャーといえば「胸の形をきれいに見せるが、しめつけ感のあるもの」か、「ワイヤがなくてしめつけないが、あまり胸がきれいに見えないもの」の二択だった新素材のワイヤの開発や、薄くて伸縮性がある生地、伸縮もできるのりが開発されたことで、「着心地が楽で、すっきり見せる中間のブラジャーが生まれた」と話す

◇流行の「ビッグシルエット」と連動

女性の意識が変わったことも大きいここ数年は胸を大きく見せたいというニーズが減ったという。トリンプで広報をしている増田佳子さんは、「今も谷間が重要なのは同じだが、人気シリーズ『天使のブラ』は14年から『ふっくら谷間』を打ち出している」という「ナチュラルな谷間が好まれ、サイドをすっきり見せることのほうが重要視される」という

ファッションも、楽な着心地が人気だ裾が広がったガウチョパンツなど、「ビッグシルエット」と呼ばれる大きいサイズの洋服が流行していることも、楽な下着が流行している一因だと増田さんは言うタイトスカートなど体の線が出る服装が主流になると、下着の線が見えることを気にしたり、おしりの形をよく見せるためにガードルが流行したりする。今は、大きなサイズを着る「ビッグシルエット」が流行しているため、補整力がない下着でも気にならない

◇震災や不況も影響

女性の間でナチュラル志向が進んだ理由を河野さんは「リーマン・ショックや震災を経て、自分に合った生活をしようと思うようになったのでは」と分析する「何か起きた際、すぐ逃げられるように」と、就寝時もノンワイヤのブラジャーをするという声もあるという。広報の増田さんは、「すっぴん風メークが人気なのも、ナチュラル志向の一つでは」と話す

スーツの時は体をスリムに見せる下着、休みの日は楽な下着と、選択肢が増えれば、「女性が好きなように選ぶことができる」と河野さん。汗でかぶれやすくなる夏に向けて、ノンワイヤの下着はさらに勢いを増しそうだ

毎日新聞

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